こんにちは、健ちゃんです。
7月に「AIの“モデル”と“ハーネス”は別物です」という記事を書きました。Claude Codeという操作環境(ハーネス)の中身のエンジンを、別のAIモデルへ載せ替えてみた話です。あのときの結論は「面白いけれど不安定」でした。
理由ははっきりしていて、ローカルにプロキシサーバーを立てて、その中継を通していたからです。やり取りが一段増えるぶん、不安定になっていました。
ただ、これは載せ替えという発想そのものの限界ではなく、相手の選び方の問題なんですよね。
前回積んだのはGPT系のモデルです。あちらにAnthropic互換の入口はないので、中継役を挟むしかありません。一方でDeepSeekとKimiは、もともと公式にAnthropic互換のエンドポイントを持っています。DeepSeekは2025年8月のV3.1から、KimiもK2の頃から用意していました。つまり最近できた抜け道ではなく、1年ほど前からある正面の入口です。
この入口を使えば、中継役がいりません。
そこで今回は、載せ替えて終わりにせず、普段やっている仕事をそのまま1本、丸ごと投げてみました。
載せ替えは5分で終わります
やることは環境変数を3つ渡すだけです。接続先のURL、APIキー、使うモデル名。これをClaude Codeの起動時に渡すと、画面はいつものClaude Code、頭の中身だけが別のAIという状態になります。
僕は毎回打つのが面倒なので、claude-altという小さな起動スクリプトを作りました。claude-alt deepseekと打てばDeepSeek、claude-alt kimiと打てばKimiで立ち上がります。
ここで1つだけ気をつけたことがあります。環境変数を、起動したそのプロセスの中だけで閉じることです。シェル全体に設定してしまうと、普段のclaudeまで巻き添えで別のAIになってしまいます。仕事道具を壊さないための線引きですね。なので、専用のCLIかエイリアスを用意しておくのがお勧めです。僕もそうしています。言っていることが分からなくても大丈夫です。AIにそうしてと依頼すれば、やってくれるでしょう。
設定値は以下の公式サイトも参考にしてください。
つまずいたのは2か所だけ。でも特徴が正反対でした
素直に動いた、と言いたいところですが、2か所ひっかかりました。この2つは、これから試す人がほぼ確実に踏むので先に置いておきます。
1つ目はKimiです。公式ドキュメントに書いてあるモデル名を指定したら、404 Not found the modelが返ってきました。キーが無効なら401のはずなので、認証は通っていて、モデル名だけが違う。実際にアカウントで使えるモデルの一覧をAPIへ聞きに行くと、ドキュメントの表記とは違う名前が並んでいて、API経由のモデル名へ直したら動作しました。
2つ目はDeepSeekです。存在しないモデル名を渡しても、エラーになりません。警告が1行出るだけで、そのまま下位のモデルへ差し替えられて動きます。
同じ「モデル名が違う」でも、片方は止まって教えてくれて、もう片方は黙って別のもので走る。気づかないまま「速いけど品質が微妙だな」と誤解するのは、後者のほうです。起動時の警告行は読み飛ばさないほうがいいですね。
実務を1本、ゼロから投げてみました
ここからが本題です。普段の仕事でパフォーマンスを見てみました。
課題は「Substackの週次レポートを1本作る」です。手元の計測データベースから直近7日ぶんを集計し、記事ごとの数字と購読者の推移を表にして、傾向を3つ以内でまとめる。データが無い期間は「取れない」と書き、推測で埋めない。出典のスナップショットIDと集計方法を末尾に書く。指示書はこれだけです。
DeepSeekは、こう動きました。
まずデータの置き場所をCLIに聞き、保存形式を1行だけ読んで構造を把握し、7日ぶんを取り出す。ここで出力がツールの上限を超えたのですが、ハーネスが結果を自動でファイルへ逃がしてくれたので、それを読み直して続行しました。あとは集計スクリプトを書いて実行し、レポートを書き上げる。
所要5分00秒、レポートは実際のマーケ資料の置き場所へ出力されました。
次いで、別のスクリプトでデータベースから計算し直して照合しました。日次7行、記事5行、notes10行、冒頭のサマリまで全部です。
結果は一致しました。
仕上がりへの不満はありません。データが欠けている箇所も、勝手に埋めずに「この日以降APIから値が来ていない」と書いてありました。DeepSeekさん、この手の仕事ならそつなくこなしてくれるようです。
使ってみて分かった、3つの壁
一方で、本番の主力にするには壁があります。
1つ目は画像です。 DeepSeekに画像を読ませると[Unsupported Image]が返ります。これは推測ではなく、実際に1枚渡して確認しました。僕の仕事は生成した絵やサムネイルを目で確かめる工程が多いので、ここが効きます。ちなみに同じ画像をKimiは読めました。文字も、描かれている人物のポーズも正しく答えます。この1点だけならKimiに軍配が上がります。
2つ目はコンテキストの狭さです。 長い作業をずっと続ける用途には向きません。話が積み上がるほど苦しくなります。
3つ目は短時間のレート制限です。 体感では、並行して走らせられるのは3つあたりが限界でした。何本も同時に仕事をさせる使い方とは相性がよくありません。
なお、Kimiでも同じ実務課題を回すつもりでしたが、本番のタスク実行でAPI呼び出しが通らず、比較は完成していません。ここは未確認のまま置きます。
そして、請求画面を見ました
いちばん伝えたいのはここです。
この日、検証にAPIを使ったのはだいたい1時間ほど。その利用画面がこれです。
金額: $3.61
APIリクエスト: 260回
トークン: 26,296,019
1時間で26,296,019トークンです。桁を見間違えていません。260回のやり取りで、1回あたり平均10万トークンが動いています。ちなみに、上の検証タスク以外のタスクも並列実行していたので、上記タスクだけではないことを付け加えておきます。
なぜこうなるのか。ハーネスは、毎回のやり取りでそれまでの文脈を丸ごと送り直すからです。人間がチャット画面で会話するのとはトークンの消え方がまるで違います。ファイルを読めばその中身が乗り、コマンドを叩けばその出力が乗り、それが次のターンでもまた乗る。従量課金と、この使い方の相性がよくないのです。
金額そのものは、1時間3.61ドルなら安いと感じるかもしれません。ですが単純に伸ばすと、1日8時間で約29ドル、月20日で約580ドルになります。もちろん使い方次第で上下しますし、僕の1時間がそのまま毎日続くわけでもありません。それでも「気軽に試す額」と「毎日の仕事道具の額」はまったく別の話だと分かります。
ここで比較対象になるのがcodexです。codexは定額のプランに含まれていて、使い込んでも請求が伸びません。一晩中まわしても、朝に請求画面を開いて青ざめることがない。
つまり、ガチで毎日使うなら、コスパはcodexのほうが圧倒的に高いというのが今回の結論です。
それでも、載せ替えを試す価値はあります
否定しているように読めるかもしれませんが、そうではありません。
今回いちばんの収穫は、Claude Codeという操作環境そのものが、エンジンを替えても崩れなかったことです。出力が上限を超えたときの逃がし方も、ファイルの読み書きも、コマンド実行も、全部いつもどおりに動きました。5分でレポートが1本仕上がり、その数字が機械照合を通ったという事実は重要です。
前回「面白いけれど不安定」と書いた部分は、プロキシが消えたことでほぼ解消しました。残っているのは、モデル側の得意・不得意と、料金の仕組みの話です。
だからおすすめの使い分けは、こうなります。毎日の主力はClaudeやCodexの定額サブスクで回す。そのうえで、サブスク枠も使い切って短時間だけ動かしたいときに、使ってみるのがいいと思います。
今日できる、小さな一歩
最後に、今日のうちにできることを1つだけ。
あなたが今使っているAIの、利用状況の画面を開いてみてください。
定額のプランなら、今月どれだけ使ったか。APIなら、いくら請求が立っているか。それだけです。設定も登録もいりません。
数字を見ると、「なんとなく便利」だった道具が、はじめて「1時間いくらの道具」に変わります。そうなると、どの仕事を任せて、どの仕事は自分でやるのかが、驚くほどはっきり見えてきます。
僕は今日、その画面を見て手が止まりました。止まったおかげで、使い分けが決まりました。あなたもぜひ、一度開いてみてください!
編集後記
今回いちばん効いたのは、記事を書くことそのものより、請求画面を開いたことでした。
道具の値段は、契約したときに一度だけ見ます。でも、使い方の値段は、開かないと一生見えません。僕はこの1年、AIの利用画面をほとんど開いていませんでした。開いてみたら、自分がどれだけ雑に道具を使っていたかが数字で出てきて、少し背筋が伸びました。
今日から、週に一度は開こうと思います!
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